電子帳簿保存法に違反したときの罰則とは?〈接骨院のための電子帳簿保存法解説④〉

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2023-10-25

電子帳簿保存法で定められた電子データ保存義務等は、違反した場合にはどのような罰則があるのでしょうか。知らないうちに違反していた、ということがないように注意すべき罰則と気を付けるポイントをまとめました。

・青色申告承認の取り消し
電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。しかし、違反したからといって、すぐに青色申告が取り消されるわけではありません。
国税庁の「個人・法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」に基づき、違反の程度や今後の改善可能性等を総合的に判断したうえで、青色申告を提出するにふさわしくない悪質な場合と認められた際に、青色申告の承認は取り消されます。
電子帳簿保存法一問一答
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf

・推計課税
帳簿や書類に不備や誤記が多い場合は、税務署による「推計課税」がおこなわれる可能性があります。推計課税は、税務調査に非協力的な納税者に適用されます。推計課税の額は、税務調査から推定金額が決められるため、より多くの税金を支払わなければならない可能性があります。また、青色申告の承認が取り消された場合は白色申告の扱いとなるため、対象外だった推計課税が適用される可能性もあります。

・追徴課税
追徴課税とは、本来の納税額との差額を支払うことです。電子データで悪質な改ざんや隠ぺいで、納税額を少なく申告したとみなされると、通常の法人税の過少申告で課される35%の重加算税に加えて、電子帳簿保存法にも違反として10%上乗せされ、計45%課される可能性があります。

・会社法による過料
電子帳簿保存法に違反した場合、会社法に基づき100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。具体的には、会社法「第九百七十六条(過料に処すべき行為)」に定められているように、帳簿・書類が規定に則った方法で記録・保存されていない、改ざんや不正などがあった場合に、過料の対象となります。
会社法 | e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086&_fsi=ruk3olN4

〇電子帳簿保存法違反とならないためには?
電子帳簿保存法違反の罰則を避けるためには、以下の4つのポイントをチェックしておきましょう。

① 電子データの保存要件を満たせているか
帳簿や書類を電子データとして保存していても、保存要件を満たせていなければ意味がありません。特に気を付けたいのが「スキャナ保存」です。スキャナ保存には「真実性の確保」と「可視性確保」の保存要件以外にも、入力期限や解像度に関する要件を満たす必要があります。
電子帳簿保存法改正により、スキャナ保存後の紙原本の即廃棄が可能となりましたが、実際の書面の情報をデータ上で正しく把握できなければなりません。折れ曲がったり歪んだりして読み取れない部分が無いか、髪を廃棄する前に確認しときましょう。

②電子データの検索要件を満たせているか
保存要件として求められている「検索機能」は、「取引年月日」「取引先名」「取引金額」の項目が検索条件として設定できていなければなりません。また、検索項目は二つ以上を組み合わせて設定できるようにすることも必要です。

➂紙書類の保存期限が超過していないか
スキャナ保存する場合、タイムスタンプは最長で2ヶ月とおおむね7営業日以内に付与しなければなりません。紙の状態で長期放置は、スキャン保存前に改ざんされてしまう可能性があるからです。その都度処理が面倒だからといって四半期ごとにまとめて付与する、という対応は基本的に認められませんので注意が必要です。

④データの保存期間を満たしているか
保存義務期間中に、書類のデータを紛失したり破棄したりしてしまうと違反対象となります。例えば、請求書や見積書は、法人は7年、個人事業主は5年保管しなければなりません。この保存期間の起算点は、書類の発行日や受領日ではなく、法人はその事業年度における確定申告の提出期限の翌日、個人事業主は確定申告の期限日の翌日です。法人の確定申告提出期限は、その会社の事業年度終了日によって決まるため、保存期間の起算点も会社により異なります。

2022年の電子帳簿保存法改正により、保存要件が緩和され帳票類の電子化を進めやすくなった一方、違反した場合の罰則は厳しくされたため、法律を正しく理解し対策していくことが必要です。電子帳簿保存法に違反しないよう、このブログが参考になれば幸いです。