不正請求をしないために知っておくべきこと!!

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2024-07-01

過去にも同コラムで不正請求について取り上げましたが、近年の審査会の権限強化により、面接確認の実施や、厚生労働省の個別指導・監査等が増加しており、業界全体としても大きな話題となっています。

不正請求についてはもちろん直ちに是正されるべきものですが、世間一般、または柔道整復師自身も不正請求についてよく知らない、理解できていないといった方が多く、私自身は逆に何でもかんでも不正請求といわれてしまっている、と感じています。
まずは何がダメなのか、ということを明確にして、正しい請求を行うことが重要です。
今回は当会が考える「代表的な不正請求」をご紹介しますが、まずは基本的事項のおさらいから紹介していきます。

接骨院が取り扱うことのできる健康保険は、療養費という現金給付として行われているものであり、この療養費の受給を
患者に替わって行う制度(受領委任)により、患者は病院などと同じように、3割ないしは1割の負担金を施術所に対して支払うだけで済む形となっています。

また接骨院、鍼灸院、マッサージ院等において、それぞれの国家資格、業務に関わる関連法規(柔道整復師法、あはき法等)の中では、業務範囲に関する法律による規程は少なく、例えば、柔道整復の場合は、(投薬や手術を伴わない)「施術」と定めるのみとなっています。

ただし、柔道整復で健康保険を適用できるのは、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷の5 傷病のみであり、脱臼、骨折に関しては、医師の同意が必要です。
また細目に関する規律は厚生労働省からの通達に基づき「療養費の支給基準」(社会保険研究所 発行)に療養費の金額、算定基準などが詳細に記載され、運営されています。
柔道整復施術等に関して、「不正」とされる内容のほとんどは、保険請求に関する「不正」であり、ここでは「柔道整復師の業務範囲はどこまでか」といった内容ではなく、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷の5 傷病の保険請求に関する不正請求の例を記載していきます。

不正請求の代表的なものは
1. 架空請求(水増し請求)
2. 付増し請求(施術の必要がない部位の請求)
3. 濃厚施術(1ヶ月の施術日数が10~15日以上継続する傾向)
4. 保険適用外請求(単なる疲労、肩こり等での請求)
等が挙げられます。

1. 架空請求(水増し請求)
 既存の患者の来院数を水増ししたり、極端な場合は、全く来ていない家族や友人の保険証を借りて、保険請求のみを
 行ったりする場合があります。
 架空請求に関しては、完全に違法請求であるために、徹底的な排除が必要です。

2. 付増し請求(施術の必要がない部位の請求)
 患者の主訴の部位(傷病部位)に加えて、他の施術の必要性のない個所も施術を行い、2ヵ所以上の保険請求を行うような
 不正請求をいいます。
 柔道整復の施術においては、柔道整復師には診断権がなく、施術部位の決定については、患者の主訴によるところが大き
 いため、不正請求とは断定できない場合が多々あります。

受領委任による保険請求であることから、被保険者(患者)が不利益にならないよう、保険を適用するためのアドバイスを行うといった側面もあるため、不適切な保険適用に誘導しているかのような誤解を受ける場合もあります。
保険が適用できる内容についてアドバイスすること自体は不正ではありませんが、傷病の決定の際は不適切で、過剰な保険施術を行う誘導にならないよう配慮する必要があります。
誤解を受けないようにするためには、

①患者の主訴や、負傷原因を的確に聴取する
②記録を適切に取っておく(施術録への記載の徹底)
③患者に対する説明を適切に行った上で施術を行う

といった基本事項を徹底することが重要です。

3. 濃厚施術(1ヶ月の施術日数が10~15日以上継続する傾向)
 特に高齢の方々は、毎日のように接骨院に通っている場合もあるのが現状です。
 1ヶ月に10~15 日以上来院している(請求されている)患者は保険者による調査の対象となっています。
 これは、健康保険を適用できる、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷の性質から、毎日来院する必要はないとの考えに基づく
 ものです。
 また、架空請求の可能性も高いとの懸念によるようです。
 ただし、架空請求の可能性以外については、保険者による調査の対象は接骨院ではなく、被保険者(患者)であることが多い
 状況にあります。

○厚生局から発出されている、月10~15日以上が継続する傾向にある被保険者は調査対象とする旨の通知
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/jyuudou/dl/h240312-1.pdf
(保医発0312 第1号 平成24年3月12日)

上記をご覧ください。
これは過去に厚生局から各保険者に対して、指導の要項として配信されたものであり、保険者からの回答書(患者調査)が急増した一つの要因となっています。
濃厚施術が即、違法請求に該当するということではありませんが、適切だと思われる請求は「施術日数月10~15日以上が
継続する傾向にないこと」、「3部位以上の請求が継続する傾向にないこと」という考え方があることが見て取れます。

4. 保険適用外請求(単なる疲労、肩こり等での請求)
 健康保険を適用できる、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷ではなく、例えば、単なる疲労や慢性的な要因からくる肩こり、
 筋肉疲労等を保険適用傷病と偽って保険請求すること等を指します。
 患者の主訴に拠るところが大きいため、

①患者の主訴や、負傷原因を的確に聴取する
②記録を適切に取っておく(施術録への記載の徹底)
③患者に対する説明を適切に行った上で施術を行う

といった基本事項を徹底するとともに、不適切な保険請求を排除し「実費での施術を進める方向性」が必要です。
混合診療(医療において、保険診療に保険外実費診療を併用する事)に関しては、柔道整復関係法規、通達等に規定はなく、
厚生局に電話で問い合わせたところ、「保険医療については、混合診療禁止の規定はあるが、柔道整復に関しては、混合診療に関する取扱い規定はない。」との回答を得ています。

また過去、平成4年9月10日に衆議院議員から柔道整復師の施術について「骨折・脱臼・捻挫・打撲に至らない状態であるものについて、柔道整復師が手技等その施術の範囲内の行為を行うことは差し支えないか。」との質問がなされたものに対し、平成4年9月18日に当時の厚生省健康政策局医事課より「およそ人の健康に害を及ぼす虞のない行為の範囲で、柔道整復師がその業務の特色を生かした施術を行うことは差し支えない。」と回答された例もあることから、上記①~③に加えて、

④保険適用をできない場合は実費での施術を行う

という考え方が必要となるでしょう。
これらが当会の考える「代表的な不正請求」ですが、冒頭でも記載したように何がダメなのか、ということを明確にして、正しい請求を行うことが重要となります。