現代社会において、多くの人が悩まされている「腰痛」。腰痛の原因については、日常生活の動作や仕事、ストレスなど、さまざまな要因が引き金となると言われており、私たちの生活の質を大きく低下させてしまうことがあります。
接骨院での施術で腰痛が緩和する可能性は十分にあります。しかし、すべての腰痛が必ず良くなるわけではなく、中には大きな病気が隠れていることも少なくありません。今回は、腰痛の原因となる主な病気、主な診断・治療法について振り返ってみようと思います。
〇腰痛の原因となる主な病気
腰痛の原因は多岐にわたりますが、基本的には脊柱に由来するものと、そうでないものがあります。
脊柱に由来するもの
・先天異常や側弯症、腰椎分離症等、主に成長に伴っておこるもの
・変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、 変性すべり症等、主に加齢により生ずるもの
・腰椎骨折や脱臼などの外傷、カリエスや化膿性脊椎炎等の感染や炎症によるもの
・転移癌などの腫瘍によるもの
脊柱以外に由来するもの
・病気によるもの(解離性大動脈瘤などの血管の病気、尿管結石などの泌尿器の病気、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科の病気、胆嚢炎や十二指腸潰瘍などの消化器の病気、変形性股関節症などの腰以外の整形外科の病気等)
・筋肉の緊張や関節の歪み、靭帯の損傷等の筋肉や関節のトラブルによるもの
・身体表現性障害、統合失調などの精神疾患や精神的なストレスによる心理的な原因によるもの
〇診断
腰痛には、さまざまな原因・病態により治療法が異なるため、医療機関による正確な診断が重要です。必要に応じてX線(レントゲン)検査、MRI検査、筋電図検査、血液・尿検査等が行われます。
しかし、腰痛の約85%は、神経症状(しびれ・麻痺等)や重い基礎疾患などがなく、レントゲンやMRIなどの画像検査をしても、痛みの原因が特定しきれない「非特異的腰痛」です。これが、いわゆる腰痛症と呼ばれるものです。
〇腰痛の治療
腰痛治療は、姿勢や生活環境、あるいは職場環境(作業環境)などを改善しながら、痛みをやわらげる「保存療法」が基本です。保存療法は手術を行わない治療法の総称ですが、具体的には、姿勢や歩き方を補正し、正しい筋肉トレーニングを行い、脳が間違って記憶している動作を修正することで、症状の根本から改善することを目的とした治療方法です。他にも、温熱や電気、牽引等の物理的な刺激を与えることで痛みを軽減する「物理療法」等があります。
病院等で行われる治療法としては、保存療法に加えて「薬物療法」「神経ブロック」が挙げられます。薬物療法の場合は、非ステロイド系の消炎鎮痛薬や湿布薬、血流改善薬、筋弛緩薬、ビタミン薬などが処方されます。また、激しい痛みに対して速効性のある「神経ブロック」は、脊髄を覆っている硬膜と脊柱管の間に薬剤を注入し、痛みをとると同時に血流をよくする治療法です。
強い痛みが続いて日常生活にも支障をきたす、排尿・排便にも不具合が生じるような神経障害がある、神経が圧迫されて足の筋力低下がみられる等の場合は、手術が必要となる場合もあるでしょう。
最近では、再生医療技術の研究が進み、椎間板再生治療やディスクシール治療という、メスを入れず入院の必要もない治療法も確立されています。これらの治療法は、日本ではあまり見かけませんが、欧米では盛んに行われている治療です。
〇腰痛の背景を見誤らないように
鍼灸接骨院で対応できるのは、筋肉や関節のトラブルが原因の腰痛であり、施術も「保存療法」や「物理療法」となります。多くの患者さまが腰痛緩和のため、先生方の施術所に来院されていることと思いますが、腰痛の原因を見誤ってしまうと、患者さまの日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
特に安静にしていても痛みが軽くならない、しだいに悪化する、発熱している、下肢がしびれたり力が入らない等の症状を伴っている場合は、早めに医療機関に受診されることをお勧めしましょう。