最近、何人かの先生から「柔整の保険請求が、近々できなくなるという噂を聞いたのですが本当ですか?」といったご質問がありました。
結論から申し上げると「保険請求が出来なくなる」ということでなく、10月から「患者ごとの償還払い」の要件として長期頻回施術が追加され、患者によっては償還払いに戻される可能性が高まってきたことと、療養費の請求を保険者ごとに受領委任から償還払いに変更したいと考える保険者がおり、それらが両軸で動き出している、というのが実際のところです。
しかしながら「保険者ごとの償還払い」を望んでいるのは一部の健康保険組合のみの話しであり、実際にそうなるかどうかは現時点では確定していません。
会員の皆様には正しい情報を知っていただき、無用な噂に振り回されることのないよう、このような話が出ている経緯と、現在の状況について共有します。
まず、基本な部分からですが、柔道整復やはりきゅう、あん摩マッサージ指圧は健康保険法の「療養費」という制度の枠組みで運用されており、その支払いは基本的に「償還払い」とされています。
ただし、各保険者等から委任を受けた地方厚生(支)局長と都道府県知事、柔道整復師の間で契約を締結することにより「受領委任」を取り扱うことができるようになっています。
この受領委任を簡単に説明すると、本来償還払いであるために患者自身で保険者に行う必要のある療養費請求を、施術管理者が代わりに行った上で、保険者からその金銭を直接受領することができる仕組みです。
元々は柔道整復にのみ認められていた仕組みであり、急性疾患を扱う柔道整復の性格上、現在も一部の医療助成などを除くすべての保険者がこの受領委任に参加しています。
ただ、近年柔道整復のみならず、あん摩マッサージ指圧やはりきゅうにもこの受領委任の仕組みが導入されています。
その際に「受領委任に参加するか否かについては、保険者等の裁量(自由)である」と仕切られたことにより、あはきでは受領委任の保険者と、償還払いの保険者が混在する結果となりました。
このことから、一部保険者より、柔整の受領委任も保険者等の裁量で参加するもしないも自由だ、との意見が出るようになりました。そして詳細については割愛しますが、一部団体から、療養費について強引な解釈をした事務連絡を各保険者に一方的に送り付けたことが発端となり、健保連の委員から「受領委任取扱いの信頼関係は崩壊したため、現在、受領委任払いで運用されている柔整療養費について、保険者の裁量で償還払いに変更することを容認していく」といった発言が療養費検討専門委員会で公式に出された、といった経緯になります。
過去には健康保険組合連合会(健保連)より、各健保の組合会の議決をもって「償還払いへの移行」を承認決議された場合、
その決定事項を尊重し健保連としては規制・抑制をしない、という発言も出ています。
あとは厚生労働省がどのように対応するか、によって方向性が代わってきますが、最悪の場合、あはきのように健保組合の約半数近くが償還払いに移行する可能性もあります。
今後も療養費検討専門委員会等で議論が継続されていく可能性はあるものの、この辺りは現状何も確定していない状況です。しかしながら、あはきの前例があるため状況的には若干不利であると言えるでしょう。柔整の保険者ごとの償還払いの行く末については、新しい情報が入り次第、また皆様にお知らせさせていただきます。
情報を制する者は経営を制する。将来の風を読み、正しい情報を掴んで施術所の運営に活かしていきましょう。