「足は第二の心臓」という言葉をご存知でしょうか? 足は、全身の筋肉の約60%を占めていると言われており、歩くことで血液を押し上げ、逆流を防ぎながら心臓に戻す役割をしています。つまり、足の健康は血液のスムーズな循環を保つことに繋がり、それは全身の健康につながっているということです。
そのため、足のトラブルは一見些細なものでも、放置すると全身の健康に影響を及ぼすことがあり、早期発見・早期治療を行い、重症化を防ぐことは、とても重要な意味を持ちます。
〇足だけに特化した専門の医療分野
日本だと、足のトラブルは整形外科や皮膚科を受診される方が多いと思いますが、アメリカやイギリスでは足のトラブルを専門的に診る専門医がいます。足の構造や機能、そして足の疾患について専門的な知識と技術を持ち、足に関するあらゆる問題に対して、総合的な診断と治療を行うことができる専門家を『足病医』と呼び、その医学の一分野を『足病学(足病医学)』と言います。
〇足病医学でできること
足病医・足病医学でできることは、足に関するあらゆる問題に対して専門的な診断と治療を行うことです。
診断
・足の痛みの原因を特定します(外反母趾、巻き爪、足底筋膜炎等)。
・変形の程度を評価します(外反母趾、ハンマートゥ、足のアーチの低下等)。
・足の感染症を診断し、適切な治療法を選択します(感染症: 爪水虫、たこ、魚の目等)。
・スポーツ活動による足の怪我を診断し、早期の回復を目指します(ランニングやジャンプ等)。
・糖尿病患者における足の神経障害や血行障害による合併症(糖尿病性足病変)を診断し、重症化を防ぐための治療を行います。
治療
診断結果に基づき、足病医は様々な治療法を組み合わせ、患者さんの状態に合わせた最適な治療計画を立てます。薬物療法(抗真菌薬・痛み止め等)や物理療法(温熱療法・超音波療法・電気治療等)で、痛みの軽減や組織修復を促したり、インソール・サポーター等の装具を用いて変形を予防したりします。外反母趾や巻き爪が重度の場合は手術を行う場合もあります。
〇日本にも足病医学はあるのか?
日本では、明治時代に西洋医学が入って来たことで、足の疾患に対する考え方や治療法に影響を与えたと言われています。現在では、足病医学は整形外科の一分野として位置づけられているため、整形外科医が治療にあたりますが、生活習慣と社会環境の変化に伴って、世界的に糖尿病患者が増加している昨今、糖尿病性足病変の治療が重要視されるようになっています。
〇柔道整復師と足病医学の視点
日本においては、アメリカやイギリスのように独立した医療分野として確立されているわけではありませんので、そういう意味ではまだ発展途上の医療・医学と言えるかもしれません。しかし、最近では、足を専門とした医師・施術家も増えており、足病医・足病医学の役割が注目されてきています。
足の専門と言えば我々、柔道整復師も足に関する専門的な知識と技術を持ち合わせています。足のトラブルに対する施術・疾患を予防することができれば、患者さまの生活の質を向上させることができ、すでに疾患を抱えている方の重症化を抑えることもできるでしょう
柔道整復と足病医学の視点を併せることで、患者さま一人ひとりのニーズに合わせた、よりきめ細やかなケアが可能となります。