
令和8年度(2026年度)の療養費改定に向けた議論が、引き続き行われています。
令和8年2月27日(金)に「第33回柔道整復療養費検討専門委員会」が、そして3月4日(水)には「第36回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」が、それぞれ全国都市会館にて開催されました。
今回も私は実際に会場へ足を運び、議論の行方を傍聴してまいりました。
会場内は、保険者側が提示した極めて厳しい調査データと、それに対し経営の危機を訴える施術者側委員との間で、緊迫した空気に包まれていました。
そこで得られた内容を、柔整・あはきの順に分けて、現場の熱量そのままにご報告いたします。
柔道整復の議論において、最大の焦点となったのは「部位転がし」に対する極めて厳格な適正化案、そして若手柔整師の未来に関わる実務経験要件の変更についてです。
健康保険組合連合会の幸野委員より、約17万人の全受療者データを分析した「受療行動の調査・分析結果」が提示されました。資料では、1年間継続して受療している患者の多くが、3ヶ月または4ヶ月ごとに全部位を「治癒」とし、その翌月にまた新たな部位を「負傷」するというサイクルを繰り返している実態が浮き彫りとなりました。
また1年間毎月通院する患者の約8割が3〜4ヶ月ごとに治癒と新規負傷を繰り返しており、これが長期施術継続理由書の添付義務や料金の長期逓減を逃れるための意図的な運用であると、厳しく指摘されました。
さらに初検日が月初(1日〜6日)に、施術終了日が月末に集中している傾向がデータで示され、「不自然な請求」の典型例として断じられています。
これを受け、保険者側は、年間通算で「6ヶ月以上かつ6部位以上」の施術を受ける患者を、保険者の判断で個別に償還払いへ変更できる類型に追加すべきであると、極めて強いトーンで主張されています。
別の話題として会場で注目を集めたのが、施術管理者の実務経験要件(現行3年)の短縮議論です。
施術者側委員より、養成施設での臨床実習が大幅に拡充(4単位・180時間)されたことを背景に、若手の早期開業支援と地域貢献のため、これを「2年」に短縮すべきとの提案がなされました。
これに対し保険者側からは「質の担保」を懸念する声が上がりましたが、今後の大きな検討項目となりそうです。
料金改定について、施術者側委員からは、医科の診療報酬改定(賃上げ分等を含む+3.09%)とのバランスを考慮し、以下の具体的な料金引き上げが強く求められました。
初検料: 現行1,550円から1,600円への増額要望
電療料: 電気代高騰を反映し、現行33円から40円への引き上げ要望
再検料: 病態管理や重篤疾患の見逃し防止のため、現行の月1回制限を撤廃し、複数回算定を認めるべきとの要望
まだ政府が決定する改定率が発表されていない関係上、料金の具体的な議論については、次回以降の検討専門委員会へ持ち越しとなります。
あん摩マッサージ指圧、はり・きゅうの検討専門委員会では、一部の事業者による「不適切な訪問施術」に対する強い憤りが感じられる議論が展開されました。
会場では施術者側委員より、介護施設と施術所が一体となった不適切な運営実態が具体的に指摘されています。
その内容の例として、施設が患者を紹介する見返りに、施術所側から患者1人あたり月額5,000円程度の「紹介料」名目で金銭が支払われている疑いについて、厳しい調査を求める声が上がりました。
また、医師が医学的必要性を精査せず、施術所側の依頼や患者の「慰安目的」の要望に応じて安易に同意書を発行しているケースが問題視されています。
特に、ある請求団体が同意書支援サービスなどと称し、「オンライン診療で同意書を書いてくれる医師を施術所に『あっせん』している実態がある」という極めて深刻な話題が、東京都後期高齢者医療広域連合の橋本委員より投げかけられました。
団体がオンライン診療を使って組織的に同意医師を仲介するプロセスは、制度の根幹を揺るがす不適切なものであり、それが頻回施術等の温床になっているのではないかとして、「オンライン診療による同意書の発行は認めるべきではない、と明確に通知等で示すべき」と強調されています。
さらに現在、注目の論点の一つとなっているあん摩マッサージ指圧の「部位数による料金包括化(セット料金化)」を巡っては、施術者側委員からの「事務作業の簡素化の観点から、包括化の検討自体は進めるべき」との発言に対し、保険者側委員は包括化について「さらなる頻回施術やいい加減な施術を招き、稼働率だけを上げるビジネスモデルに繋がりかねない」として、現時点では慎重(否定的)な姿勢を崩していません。
あはきでも令和8年度からオンライン請求導入に向けた課題整理が本格化します。視覚障害を持つ先生方が多いため、入力支援システム等の「合理的配慮」をいかに制度として担保するかが大きな焦点となるでしょう。
料金改定については、移動に伴う燃料費高騰を背景に、訪問施術料の単価見直しを求める声も強く出されました。
こちらも柔整同様、詳細については次回以降の検討委員会へ持ち越しとなります。
今回、二つの委員会を立て続けに傍聴して私が最も強く感じたのは、厚労省および保険者側による「データに基づいた徹底的な見える化」です。
これまでの議論が「概念的・感覚的」なものであったのに対し、現在は「何割の患者が、何日目に、どの部位を操作しているか」といった具体的なレセプトデータに基づき、不自然な請求がシステムで自動的に炙り出される段階に入っています。
これは、単にルールを守るだけでなく、「なぜこの施術が、この期間、この部位に必要なのか」をデータと記録で客観的に証明する力が、現場の先生方に強く求められる時代になったことを意味します。
実際の改定までにはまだ時間がありますが、今から自院の運用を客観的に見直し、適切な体制を整えておくことが、先生方の施術所と患者様を守るための最大の防御となります。
不当な規制に対しては私たちも共に声を上げ、真面目に地域医療を支える先生方が正当に報われる制度となるよう、アトラ請求サービスとしても全力を尽くしてまいります。
今後も最新情報が入りましたら速やかに共有させていただきます。