2018(平成30)年5月に始まった「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」(以下、広告検討会)は、
現時点で2019(令和元)年11月より2年以上行われておらず、議論も止まったままになっています。
新型コロナウイルスの発生によりその対策が優先され、広告検討会の開催自体が見送られているものと考えられます。
厚生労働省は当初、2018年末を目途にガイドラインを取りまとめ、
1年間の周知期間を経て2020年から都道府県による違法広告の取り締まりを強化する方針でした。
これまで長期間議論が止まっているとはいえ、すでに広告ガイドラインの作成方針については示されており、
様々なハードルはあるものの実施までの道のりはそう遠くないと思われます。
→広告ガイドライン作成方針
そこで今回は、当会の運営母体であるアトラグループ株式会社が独自に制定する
「柔道整復、あん摩、はり、きゅうの広告に関わるガイドライン」を一部ご紹介したいと思います。
過去に本コラムにてご紹介したこともありますが、このタイミングで当該ガイドラインの大枠を掴んでご準備いただくことで、
実際に厚生労働省より広告ガイドラインが発表されたとしても、それほど慌てずに対処することが可能になるでしょう。
では、さっそくガイドラインの内容をみていただきましょう。
1.鍼灸院、接骨院、マッサージ院に関して、広告を行うことができる内容
①柔道整復師、鍼灸師、マッサージ師である旨
②施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
③施術日又は施術時間
④ほねつぎ又は接骨(柔整法)、もみりょうじ(あはき法)、やいと・えつ(あはき法)、小児鍼(あはき法)
⑤医療保険療養費支給申請ができる旨
※全てが保険適用と誤解を招くような表現は行わない。
(例)
柔道整復 :脱臼、骨折に関しては医師の同意が必要な旨を記載
鍼灸 :医師の同意が必要な旨を記載
マッサージ:医師の同意が必要な旨を記載
⑥予約に基づく施術の実施
⑦休日又は夜間における施術の実施
⑧出張による施術の実施
⑨駐車設備に関する事項
2.広告に当たるものの具体例
①チラシ、パンフレット等(ダイレクトメール、FAXによるものを含む)
②ポスター、看板
③新聞、雑誌その他出版物、放送、映写又は電光によるもの
④Eメール、インターネット上のバナー広告等
④不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用する
スライド、ビデオ又は口頭で行われる演術によるもの
広告であるとみなされる要件は、
①誘因性 ② 特定性 のすべてを満たす場合である。
(①患者を誘引する目的があり、②施術所名称、住所等の記載があれば広告とされる。)
3.広告に当たらないとみなされるの
①学術論文
②新聞、雑誌での記事
③体験談、手記等
④院内掲示、院内で配布するパンフレット等
⑤患者からの申し出に応じて送付するパンフレット、Eメール等
⑥従業員募集に関する広告
4.広告に当たらないとみなされるもののガイドライン
広告には当たらない場合(院内のポスター、患者からの申し出に応じて送付するパンフレット、
Eメール等)でも以下のような表記をした場合、各法令に違反する可能性があります。
①接骨院、鍼灸院、マッサージ院等で、医業と誤認される恐れのある記載
例:治療 医療 全身を診る 問診 視診 触診 診察券 原因究明 整形外科的
検査 医学的根拠 専門医 等(医師法関係)
これらの表現を用いることは、接骨院において本来行うことができない医業を行って
いるとの誤認を招く恐れがあるため、景品表示法第4条違反となる恐れもあります。
「今まで鍼灸院、接骨院では使ってきた言葉であり、それ自体違法とは言えないが、
医業と誤認させる可能性があるので、好ましくはない。」というのが行政当局の見解です。
②効果効能の記載
例:肥満解消強 精強壮 老化防止 免疫機能の向上 風邪の予防 生体電流を補うことで
刺激が与えられ 細胞が活性化します等(薬機法関係)
③優良であるかの誤認を招くような記載
全てが保険適用で施術を受ける事ができるかのような表記
例:「整骨院では、100 円~600 円程度の負担金で施術が受けられます。」
症状の改善を確約するかのような表記
例:「当院の施術により、痛みが大幅に改善します!」
施術、物品の内容の誇大広告
例:「業界最高水準の機器、最新の機器を使っています!」等(景品表示法関係)
④その他
交通事故による受傷の施術に関して、鍼灸接骨院において行うことができるのは、
交通事故後 の「捻挫、打撲、挫傷の施術」「鍼灸による、頸椎捻挫後遺症などの
施術」「これらの施術に関する施術費用を自賠責保険に対して請求するための手
続」などです。
医業との誤認が生じないように、交通事故の施術に関しては、以下の内容を整理し
て文章を記載しなければなりません。
・交通事故による捻挫、打撲、挫傷の施術を行うことができる旨
・自動車保険により施術料金の一部が填補される旨
・自動車保険に対して施術料金の代理請求を行う旨
これらの内容を、誤認されないように記載しなければなりません。
何が良くて何がダメなのかということを明確に理解して、正しい活動を行っていけるようにしなければ院の繁栄はあり得ません。
上記のような内容を把握したうえで営業活動を行えば、安心して活動できるのではないでしょうか?