第19回、第20回柔道整復療養費検討専門委員会の解説

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2022-03-01

2022年1月31日(月)に第19回、2022年2月24日(木)に第20回となる「柔道整復療養費検討専門委員会」がそれぞれの日程で開催されました。
本委員会での議論は今後の柔整業界にかかわる、非常に重要な内容となっていますので、こちらの最新情報についてお伝えしていきます。

今回も新型コロナウイルス感染拡大防止への配慮から、オンライン会議形式での開催となっています。両委員会とも「柔道整復療養費の適正化について」と題し、それぞれ議論された内容については下記のとおりです。

①明細書の義務化について
②患者ごとに償還払いに変更できる事例について
③療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み

今回もこれまで同様、座長の遠藤久夫氏をはじめ「有識者」、「保険者等の意見を反映する者」、「施術者の意見を反映する者」の3者と、厚生労働省(事務局)側で行われました。それぞれの検討事項について解説していきます。

①明細書の義務化について
現状、柔道整復施術所においては、患者から施術に要する費用に係る明細書の発行を求められた場合にのみ、明細書を交付することとされています。施術に要する費用に係る明細書を患者に手交することは、業界の健全な発展のためにも必要であることから、過去の検討委員会でも明細書の発行を義務化する提案がなされていました。

1月の委員会において、診療所における明細書の取扱いを参考に、今回施術所における運用案が出されています。
具体的には施術所内掲示に係る参考様式や、明細書発行機能があるレセコンを使用している施術所は明細書を無償で発行する、などという案が示されています。
また、事務局から施術所の負担軽減措置として、「領収証兼明細書」としての標準様式が示され、合わせてレジスターで印刷する様式のイメージについても共有されています。

患者側の代表として参考人の意見陳述が行われ、全体の約7割が明細書の発行が必要であるとのデータが出されています。
業界の健全な発展のためにも明細書の発行は必要であるとされていることから、時期はともかく義務化自体についてはほぼ決定と言えそうです。

なお、発行費用については施術者側の委員より保険料金の算定についての要望が出され、今後料金改定の際に改めて議論されることとなり、2月の委員会では議論自体が行われていません。

②患者ごとに償還払いに変更できる事例について
現状では、不正が「明らか」な患者及び不正の「疑い」が強い患者であっても、引き続き受領委任払いとされています。
これに対して、問題のある患者については、保険者において、受領委任払いではなく償還払いしか認めないようにする権限を与えるべきとの意見があり、この検討が始まりました。

対応方針として、不適切な患者の償還払いについては、不正が「明らか」な患者に加え、不正の「疑い」が強い患者も対象とすることが示されています。
ただし、真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」、「償還払いとするプロセス」について年末までに検討することとされていました。

2月の委員会において受領委任協定・契約の改正案として示された、「償還払いとする範囲」(対象患者)については下記のとおりです。

1.自己施術(柔道整復師による自身に対する施術)に係る療養費の請求が行われた柔道整復師である患者

2.自家施術(柔道整復師による家族に対する施術、柔道整復師による関連施術所の開設者及び従業員に対する施術)を繰り返し受けている患者

3.保険者等が、患者に対する照会を適切な時期に患者に分かりやすい照会内容で繰り返し行っても、回答しない患者

4.複数の施術所において同部位の施術を重複して受けている患者

なお、1月の委員会までは「施術が非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者」についても対象とする方向性で議論が進んでいましたが、2月の検討委員会の案からはこちらが一旦外れています。
これは、柔道整復施術において、患者の状況がそれぞれ異なる中で、何をもって長期・頻回と言えるかの線引きについてはまだまだ議論が足りないことから、対象患者の基準については引き続き検討することとされたためです。

同様に2月の委員会において受領委任協定・契約の改正案として示された、「償還払いとするプロセス」については下記のとおりです。

上記1~4の対象患者に対しては、保険者等から被保険者及び被扶養者に対して、「償還払い注意喚起通知」を送付します。またその翌月以降に同様の施術及び療養費の請求が行われ、なお上記1~4までのいずれかに該当すると考えられる場合は、事実関係を確認するため、保険者等から患者に対して、文書や電話、面会により説明を求めることになります。
ここまで行ってなお改善が無い場合に、当該患者及び当該患者に施術を行っている施術所の施術管理者に対して、「償還払い変更通知」が送付され、該当患者は受領委任が中止されて償還払いに戻されることになります。

不適切な患者の償還払いについては、上記のように範囲を絞った上で適切なプロセスを踏むことによって、真に不適切な患者に対象を絞ることが出来るため、適正な患者指導をしている施術所においては大きな影響はないでしょう。
ただし、今後「施術が非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者」が対象として含まれた場合、どのような線引きにするかは非常に難しい部分であり、真に施術を必要としている患者にとっては重要な部分です。
保険者ごとに基準が大きく変わらないような仕組みが必要となるでしょう。

③療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて
現状として、復委任団体の中に悪質な団体の存在があることが認識されています。実際に本来、施術管理者に支払われるべき療養費を、団体の運営者が私的流用して破産し、療養費が施術管理者に支払われないといった事例がありました。現状の課題を踏まえ、療養費を施術管理者に確実に支払うため、不正防止や事務の効率化・合理化の観点から、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組み、併せて、オンライン請求、オンライン資格確認につながる仕組みとできないかが検討されていました。

この「公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組み」について、具体的な例として医科における社会保険診療報酬支払基金等が審査・支払いを行う案が検討されていました。

参考人として意見を述べた社会保険診療報酬支払基金からは、請求受付・支払業務に関しては、現在、医療機関等とオンラインでやりとりしている基盤を活用できる余地があると考えられる一方、審査業務については、支払基金は柔整審査に係るノウハウを一切有しておらず、また、各都道府県の審査委員会事務局機能は極めて小規模なものへ縮小されることから、紙を前提とした現行の審査業務を担うことは極めて困難である旨の意見が出されています。

したがって、オンラインによる請求を実現したうえで、審査については訪問看護のように原則コンピュータチェックにより完結させる等、ICTを最大限に活用した効率的な仕組みを構築していくべきとし、施術者への直接支払いを行うための手段として、オンライン請求が必須であるという方向性になってきています。

またその時期について、元々は2022年6月(次期療養費改定)までに方向性を定め、2024年度中の施行を目指すこととされていましたが、一部保険者よりシステムの構築が到底間に合わないとの意見が出され、現実的には2026年度中の施行を目指して進められることになりそうです。
こちらについては3月以降も引き続きの議題として、審査支払機関からの意見聴取を行ったうえで、審査支払機関も議論に参加し、検討を進めることとされています。

そもそも復委任自体は何十年も前から継続して行われていることであり、今回の問題は悪質な団体の運営者が起こした一個人の資質の問題であると考えます。
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情報を制する者は経営を制する、正しい情報を掴んで施術所の運営に活かしていきましょう。