最近、保険者から「医科との併給・併用の禁止」を理由とした返戻や不支給が増えてきています。
中には痛み止めなどの投薬があった場合には全て返戻、といった極端な対応をする保険者も存在しています。
今回は療養費における医科併給について、正しい考え方を共有していきたいと思います。
厚生労働省医療課長通知で示されている文面には「療養費は、同一疾病にかかる療養の給付(診察・検査及び療養費同意書交付を除く。)との併用は認められないこと」とあります。
つまり、医科併給については下記のような考え方になります。
〇 対診…診察、検査、療養費同意書交付
× 併診…治療行為、投薬など
対診は医科併給とはならず、併診が医科併給として不支給の対象となる、ということです。
また、この併診は同一日に限定されておらず、どこまで医療機関の管理下にあったか、で判断されることに注意が必要です。
例えばA病院で月初と月末に治療行為があり、月中はずっと施術所にかかっていた(同一日に病院にかかっていない)場合でも、施術所からの療養費請求は全て医科併給の対象になり得ます。
また、月初に病院で治療を受け、その際に10日分湿布が処方された(投薬があった)場合、10日までは医科併給の対象になり得ます。
一方、保険医療機関での傷病名と、療養費請求にかかわる傷病名が同一でない場合には、医科併給を心配する必要はありません。
例えば病院で生理痛のために痛み止めをもらったような場合は、柔整の保険請求とは無関係の可能性が高く、逆に打撲に対する痛み止めをもらったような場合は、鍼灸の保険請求とは無関係の可能性が高いわけです。
したがって冒頭に紹介した保険者のように、「痛み止めなどの投薬があった場合には全て返戻」というのは誤った対応である可能性があります。
このような対応を受けた場合は、病院でどのような傷病名で投薬を受けたか等、詳細を確認する必要があります。
確認の方法としては、傷病名の記載がある明細書が患者の手元にある場合はそちらで、ない場合は患者から病院に問い合わせて確認してもらうようにしましょう。
医科併給の考え方の例外として、あん摩マッサージ療養費が挙げられます。
あん摩マッサージは病名によらず症状を支給対象としています。
病院にリハビリ施設がないような時代に、あん摩マッサージ指圧師に同意書を出してリハビリのみを依頼していた歴史的経緯もあり、
それを理解している保険者からはあん摩マッサージの療養費が医科併給と判断されるケースはありません。(理解していない保険者からはまれにそのように判断されることがありますが…)
柔整や鍼灸については、実際に医科併給であり不支給となった場合、これを覆すことは出来ません。
療養費は健康保険法上、療養の給付(医療)を行うことが困難な場合、または保険者がやむを得ないと認める場合に限って支給されるものであるとされているからです。
したがって実際に医療機関と併用されているような場合は、医療費が優先的に支払われることになり、療養費は必ず不支給となってしまいます。
医療機関との併用とならぬよう、患者に対して正しく指導することが重要です。