最近、会員の先生より、柔道整復療養費の受領委任の取扱いにおいて「無病」として初検料のみ算定・請求することに対するお問い合わせをいただきました。
この「初検料のみ算定する」という根拠については、療養費の支給基準「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項等について」第2 初検料及び初検時相談料の6において「患者が異和を訴え施術を求めた場合で、初検の結果何ら負傷と認むべき徴候のない場合は、初検料のみ算定できること。」(令和6年度版 社会保険研究所発行 P129)とあります。
このように負傷の徴候が見られず初検料のみ算定した場合、施術録へ記載する傷病名は「無病」、「無傷」、「無症」などとし、申請書へ記載する傷病名もこの通りとしたうえで、初検料のみ請求することとなります。
なお支給基準上、この時に初検時相談支援料は同時算定することができません。
当会の請求ソフトA-COMSでは「初検のみ算定」をチェックすることで申請書や施術録を出力した際には自動的に負傷名が「無病」として印字されるようになっています。
この無病に関して理解が不十分なことが原因で、自費施術を受けた全ての患者に療養費で初検料のみ算定して請求し、保険者から疑義照会として全返戻を受けるような事例も起こっています。
今回はこの無病について少し詳しくご紹介していきます。
解釈としては、無病はあくまで患者が保険適用を求めて来院された場合に適用となるもので、自費施術を求める患者に一律に算定できるようなものではない、ということになります。
様々な保険者と意見交換をした結果、算定が可能と考えられる具体的な例としては下記のような場合が考えられます。
①外傷性の負傷を疑うべき原因はあるが、症状が確認できない場合
②疼痛や違和感などの症状は確認できるが、原因が不明瞭な場合
この無病を「治癒」と判断すれば、例えば数日後に新たな負傷をし、改めて来院した場合は同一月内に2回初検料が算定できます。また極めてまれですが、ひと月の間に無病として初検料が2回算定されることも理論的にはあり得ます。
逆に算定が不可と考えられる具体的な例としては下記のようなものがあります。
①不調を訴えているが、柔道整復の業務範囲外(内科的疾患など)を疑う場合
②そもそも療養費の適用範囲以外の目的(姿勢改善など)で来院している場合
あくまで患者が異和を訴えて保険施術を求めたときに、何ら負傷と認むべき徴候のない場合に算定できるのが無病による
初検料です。そして、来院時点で外傷性の疑いがあり、初検の結果そうでなかったものを支給対象であると考える保険者がほとんどです。
したがって来院時点で内科的疾患が強く疑われるようなものはそのまま転医となる認識で、引き続き施術所で自費として
施術するような場合は、初検料は自費料金に含まれる、というのが保険者の認識となっています。
前述したように、自費施術を受けた全ての患者に初検料のみ算定を行っているようなケースは大量返戻に繋がってしまうので十分注意いただければと思います。
情報を制する者は経営を制する、正しい情報を掴んで施術所の運営に活かしていきましょう。