法人か個人か、賃貸か持ち家か【自宅開業の節税①】

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2024-12-04

個人事業主の方だと、自宅を仕事場としてお使いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。自宅と別に接骨院を構えている場合でしたら、家賃や水道光熱費を簡単に分けることができますが、自宅兼施術所の場合だと、仕事場とプライベートスペースを完全に分けることができないため、家賃や水道光熱費をどうやって経費計上すればいいの?というお声もよくお聞きします。

〇そもそも自宅兼施術所は経費に入れられる?
自宅の一部を接骨院として利用する場合、その部分にかかる費用を一定の割合で経費として計上することができますが、事業が法人か個人か、自宅が賃貸か所有か、といった条件によって経費処理は大きく変わってきます。それぞれの場合について、簡単にご説明します。

・個人事業の場合
(1)個人で自宅を所有
個人で自宅を所有している場合、原価償却費の一部を使用割合に応じて経費に算入できます。ただし、住宅ローンを組んでいる場合、事業用部分にかかる経費処理は少し複雑になります。
住宅ローン控除は、居住用の床面積を50%以上にすることで受けられますが、事業用の床面積の割合に応じて減額します。居住用の床面積が90%以上あれば全額控除が可能となります。住宅ローンの元金の返済は経費にいれることはできず、建物の減価償却費(土地代含まない)、住宅ローンの金利、固定資産税等の支出に対して、仕事場として使っている割合が経費となります。
事業用のスペースを増やせば経費に算入できる費用は増えますが、居住用の床面積が減るため控除額が減少する、という構図ですね。

(2)個人で自宅を賃貸
自宅が賃貸物件の場合、家賃の一部を使用割合に応じて経費に算入できますが、「家主の承諾」が必要になります。特に、賃貸借契約書の「使用目的」の欄が「居住のみを目的とする」だと、自宅開業は既存の契約に反するとみなされ、違約金が発生したり退去を命じられたりすることも考えられます。必ず、事前に家主や不動産屋へ相談しておきましょう。

・法人事業の場合
(1)個人で自宅を所有
まず個人で自宅を所有している場合、法人と個人間で賃貸契約を結び、法人が個人に家賃を支払うことで経費計上ができます。この場合の法人が支払う賃料は、相場と同水準で設定する必要があります。自宅全体の賃料を近隣相場から推定し、実際に使用しているスペースの割合に応じた賃料を計算します。
法人が個人に支払った家賃は、個人で不動産収入となるため、個人所得税を確定申告する必要があります。また、固定資産税も忘れずに法人で使用しているスペースに応じた額を経費に算入しましょう。

(2)個人で自宅を賃貸
自宅が賃貸の場合、法人の施術所スペースにかかる家賃は、個人が立替払いしているという処理になります。個人が法人から受け取った家賃は不動産収入となりますが、同時に家賃を大家(不動産オーナー)に支払うことになるので、所得は発生せず通常確定申告の必要もありません。

(3)法人で自宅を賃貸もしくは所有
法人が、法人名義で賃貸している・所有してる場合、社宅ということで一旦法人の費用として計上できます。ただし、全額を法人費用にしてしまうと、自宅部分まで会社負担ということになり、その分が給与として課税されます。そのため、20~50%程度は賃貸料相当額として、個人負担にしておく必要があります。

〇一番お得なのは?
状況や金額によって変化するので一概には言えませんが、経費を最大限にしたい場合は、法人で所有または賃貸する方法が一般的に有利です。法人の費用として全額を計上した後、その一部を個人負担とすることで、より多くの経費を認めてもらうことができます。ただし、具体的な金額や経費処理方法は、個々の状況によって大きく異なりますので、税理士にご相談ください。

参照:施術所、兼、自宅の節税|アトラアカデミー