2024年12月10日、医療脱毛大手「アリシアクリニック」の運営法人が、経営に行き詰まり裁判所から破産手続きの開始決定を受けたというニュースが飛び込んできました。近年、脱毛サロンの破産が相次いでおり、今回は過去最大規模の消費者被害となると言われています。なぜこのような事態になってしまったのでしょうか?今回は、脱毛サロンが直面している厳しい現状と、その背景にある要因について深堀りしていきます。
〇脱毛サロン業界を取り巻く現状
脱毛サロンは、美容意識の高まりとともに、ここ数年で急成長を遂げてきました。しかし、その一方で、多くのサロンが厳しい経営状況に陥り、倒産へと追い込まれています。東京商工リサーチによると、2023年度のエステティック業の倒産(負債1,000万円以上)は、95件(前年度比69.6%増)と前年度の1.7倍に急増しています。
近年、倒産・破産した主な大手脱毛サロン
・脱毛ラボ(2022年)
・シースリー、銀座カラー(2023年)
・ビー・エスコート(2024年)
医療脱毛・大手脱毛サロンですら倒産・破産する主な理由としては、以下の3つが挙げられます。
1. 競争の激化
美容業界全体の注目度の高まりとともに、脱毛サロンへの新規参入が増加しました。接骨院・整体院でも脱毛サロン・サービスを始めたという話をよく耳にします。それにより、新規参入と既存サロン間の価格競争が激化しました。脱毛サービスは、各社のサービスに大きな差がつきにくいため、価格で勝負することになり、新規顧客の獲得が困難になると売上が下がり、サロン経営が悪化する、という悪循環に陥ったと考えられます。
2. 顧客ニーズの変化
昨今の物価上昇の影響も相まってか、消費者全体の低価格志向が強まり、高額な脱毛プラン契約を敬遠する傾向が見られます。また、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、セルフケアや家庭用脱毛器の性能向上など、脱毛方法が多様化しているため、顧客の選択肢が広がっています。
3. コスト増加
新規顧客獲得や話題性のために、芸能人を広告に利用したりすると広告宣伝費が膨らんでいます。また、都心部など立地の良い場所での店舗運営・多店舗展開は、テナント料等の固定費の負担が大きくなります。そして、当然ですが、サロンで施術を行うエステティシャンの確保や育成にかかるコストも必要になるでしょう。
〇まとめ
脱毛サロン業界大手の倒産は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こっているようです。
競争の激化、顧客ニーズが変化・・・、鍼灸接骨院業界にとっても少し耳が痛い話かもしれませんね。こうした状況に我々の業界が陥らないよう、顧客満足度の向上、差別化されたサービスの提供、コスト削減、法規制の遵守など、多角的な取り組みが必要です。また、価格競争に巻き込まれることのない結果を出せる技術や、適切な判断が行える客観的なデータ等が、今後ますます不可欠となっていくと思われます。
【参照】
「エステサロン」の倒産急増、年度最多の95件 コロナ禍の落ち着き後も客足戻らず | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198480_1527.html