施術家の皆さまが患者の健康全般をサポートする中で、食生活についてもアドバイスされることがあると思います。身体を回復させるために、食事から栄養を摂取することは非常に大切ですが、中には身体に炎症を引き起こすものがある、というのはご存じでしょうか。今回は、最近注目されている「レクチン」と炎症との関係について解説します。
〇レクチンとは何か?
レクチンは、主に植物に含まれるタンパク質の一種で、植物が外敵から身を守るための防御メカニズムとして機能していると言われています。食品中では、豆類(大豆や赤インゲン豆等)、ナス科の野菜(トマト、ナス、ジャガイモ等)、全粒穀物に多く含まれています。
一部の研究では、過剰なレクチンの摂取が腸壁に影響を与え、リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)と呼ばれる状態を引き起こす可能性があることが示唆されています。腸壁が損傷すると、未消化の食物粒子や細菌等が血流に漏れ込み、全身的な炎症反応を誘発することがあります。炎症が慢性化すると、関節痛や筋肉痛、自己免疫疾患のリスクが高まることが知られています。
〇レクチンと炎症の関連性
現在の研究では、レクチンが直接的に炎症を引き起こすメカニズムとして、腸内環境への影響が大きいと言われています。レクチンは腸内細菌叢に影響を及ぼし、悪玉菌の増殖を促す可能性があります。これにより、腸内バランスが崩れ、慢性的な炎症が発生しやすくなります。
慢性的な腹痛・下痢・便秘などの腸の炎症が原因と考えられる症状や、アトピー性皮膚炎、湿疹などの炎症性皮膚疾患、神経痛・頭痛などの神経系の炎症が原因と考えられる症状は、レクチンの影響も症状の一因になっている可能性があります。
また、レクチンが体内の特定の細胞と結合することで、免疫系が誤って自分自身の組織を攻撃する自己免疫反応を引き起こすことがあります。例えば、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などがこれに関連するとされています。
〇炎症を抑えるためには
レクチンによる炎症を軽減するためには、レクチンの摂取量を適切にコントロールすることが有効と考えられます。
レクチンは加熱や発酵によってその活性が低下すると言われているので、豆類や穀物を調理する際は、しっかりと加熱したり、発酵食品として摂取することを推奨しましょう。
レクチンを多く含む野菜は、なるべく控えることで炎症症状が軽減する可能性があります。逆に、アボカド、ブロッコリー、ズッキーニ、白米などはレクチン含有量が低いため、炎症を抑える食事プランに取り入れるのに適しています。
〇柔道整復師、鍼灸師としての役割
柔道整復や鍼灸の臨床においても、炎症が原因で痛みや回復の遅れが見られる患者に出会うことが多いのではないでしょうか。柔道整復師、鍼灸師は、施術を通じて患者の身体機能を回復させるだけでなく、生活習慣の改善についてもアドバイスできる存在です。特に慢性的な痛みや回復の遅れが見られる患者には、栄養や食生活を見直すきっかけを提供することが重要です。
ただし、レクチンを含む食品には多くの栄養素も含まれているため、過度な制限は逆効果となることもあります。バランスの取れたアプローチで、施術と食事指導を組み合わせたケアが求められます。患者一人ひとりに適したアドバイスを行うことで、より包括的なケアを提供できるでしょう。