
本年7月1日の療養費改定により、柔整では2部位目からの80%算定(逓減)や初検・再検ルールの厳格化、あはきでは月16回以降の50%逓減や訪問施術における施設減算の導入など、これまで以上に適正な療養費運用が求められる時代に突入しました。こうした制度環境の変化を前回のコラムでも取り上げましたが、今回改めて先生方に考えていただきたいのが、「これからの施術所経営をどうしていくのか」というテーマです。
療養費制度に沿って適正に請求することは、もちろん大前提です。
しかし、制度の変更に合わせて請求方法を見直すだけでは、施術所としての成長には限界があります。
今後ますます重要になるのは、患者様に「この院に通い続けたい」、「ここに来れば健康になっていける」と感じていただけるような、継続的な価値を提供することではないでしょうか。
前回のコラムでは、そのための一つの方法として、生体データを活用したカウンセリングや施術前後の変化の見える化についてお伝えしました。患者様ご自身が身体の変化を実感できれば、施術の必要性や継続する意味を理解しやすくなります。
そして、そこからさらに一歩進めると、「施術を受ける場所」から「健康づくりを続ける場所」へと、施術所の役割を広げていくことができます。その具体的な取り組みの一つとして、今回ご紹介したいのが「インターバル速歩」についてです。
インターバル速歩は、信州大学の能勢博特任教授らが開発し、NPO法人熟年体育大学リサーチセンターが科学的根拠に基づいて指導・普及を行っているウォーキング法です。
単に「たくさん歩く」のではなく、「早歩き」と「ゆっくり歩き」を3分ずつ交互に繰り返すことを基本とし、1日5セット、約30分を週4回行うという、非常にシンプルな運動方法です。
この方法が興味深いのは、歩行という誰でも取り組みやすいシンプルな運動でありながら、一定の科学的エビデンスが示されている点です。1日1万歩の普通歩きグループと比較して、インターバル速歩では最高酸素摂取量が約10%向上し、体力が約20%向上したという結果が紹介されています。
もちろん、施術所の先生方がこの運動を取り入れる目的は、単に患者様に歩いてもらうことではありません。
ここで重要になるのが、「患者コミュニティ」という考え方です。
これまでの施術所では、患者様が来院し、施術を受け、次回予約をして帰るという流れが一般的でした。
しかし、施術時間以外の日常生活まで含めて健康づくりを支援することができれば、先生と患者様との関係性は大きく変わります。
例えば、院を拠点としてインターバル速歩のグループをつくり、定期的に地域の患者様と一緒に歩く。
歩数や体力の変化を確認しながら、運動の実践をサポートする。そして、参加者同士で励まし合いながら継続する。
そうすることで、施術所は「痛くなったら行く場所」から、「健康を維持するために定期的に関わる場所」へと変わっていきます。
患者様にとっても、一人で運動を続けることは簡単ではありません。最初は意欲があっても、忙しさや天候などを理由にやめてしまうことがあります。しかし、同じ地域の仲間がいて、先生が見守ってくれて、定期的に集まる機会があれば、運動を続けるための動機づけが生まれます。つまり、インターバル速歩を単なる運動指導として提供するだけではなく「地域の健康コミュニティ」として育てていくことに、大きな可能性があります。
この取り組みを当社では「施術のプロから、地域の『予防医療リーダー』へ」という考え方で紹介しています。
認定インストラクターが地域コミュニティの主宰者としてウォーキング指導と日々のカラダケアを実践し、施術とインターバル速歩を組み合わせながら、日常生活から健康寿命を延伸していくモデルです。
これは、今後の施術所経営を考えるうえでも非常に重要な視点ではないでしょうか。
療養費の対象となる施術だけを提供していると、施術回数や継続通院という数字に目が向きがちです。
しかし、患者様の健康づくりそのものを支援できれば、施術所に通う理由を一つ増やすことができます。「腰が痛いから通う」、「肩こりがあるから通う」だけではなく、「運動を続けるために通う」、「健康状態を確認するために通う」、「仲間と一緒に健康づくりを続けるために通う」という新しい来院理由をつくることができます。
これは、いわゆる「患者様の囲い込み」という考え方とは少し違います。
患者様を離れにくくするのではなく、「この場所とつながっていることで健康づくりを続けられる」という価値を提供することです。そして、その価値をつくるためには、施術者自身が運動指導について学び、正しい方法を伝えられることが重要になります。
今回、アトラグループでは、信州大学・能勢教授が提唱するインターバル速歩の全国普及プロジェクトに取り組んでいます。医学的根拠に基づく認定インストラクターを養成し、各地域でのコミュニティ形成を支援する取り組みです。
「施術を受けて終わりではなく、施術後の日常生活まで支える」、「院の中だけではなく、地域の健康づくりまで支える」、そんな施術所のあり方が、これからの時代にはますます重要になってくるのではないでしょうか。
今回の療養費改定は、私たちに「これまでと同じやり方を続けるだけでよいのか」と問いかけているようにも感じます。
制度を正しく理解し、適正な請求を行うことはもちろん大切です。
そのうえで、患者様に選ばれ続けるために、どのような価値を提供できるのかを考えることも、これからの施術所経営には欠かせません。
インターバル速歩は、そのための一つの有力な選択肢になり得ると私たちは考えています。
エビデンスのある運動を学び、それを地域の患者様に届ける。そして、施術所を中心とした健康コミュニティをつくっていく。これまでとは少し違った形で、患者様との新しい関係を築いてみてはいかがでしょうか。
インターバル速歩の認定インストラクター養成講座にご興味のある先生方は、ぜひアトラ請求サービスまでお気軽にご連絡ください。アトラ請求サービスでは、制度改定への対応だけではなく、これからの施術所が患者様や地域から選ばれ続けるための新しい取り組みについても、引き続き情報を発信してまいります。
今回の改定を単なる試練と捉えるのではなく、院の価値を高め、患者様とのつながりをより深めるきっかけへと変えていきましょう。