令和5年12月1日(金)に「第29回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」が開催されました。
今回は柔整の開催は無く、あはき単独で行われています。
当委員会は前回、前々回ともオンライン資格確認についての議論でしたが、今回は昨年7月以来の令和6年度療養費改定に
かかわる内容でした。
今回も最新情報についてお伝えしていきます。
7月までに議論されていた、あはきで予定されている次回改定は下記のとおりです。
①往療料の距離加算の廃止
あはき療養費は往療料の支給額が多く、施術料よりも往療料の割合が高くなっているのが現状です。
また、あはきで設けられている距離加算については、医科では過去に廃止になっており、訪問看護ではそもそも設けられ
ていません。
このような現状や現在の交通事情を踏まえて、あはきの距離加算も改定ごとに縮小しており、現在算定できるのは4km超
の区分とそれ以下の2パターンのみになっています。
令和6年度の改定では、この距離加算(4km超の区分)自体の廃止が検討されています。
②離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
距離加算廃止の影響に配慮し、離島や中山間地等の地域における施術体制を確保し、患者が必要な施術を受けられるよう
にする観点から、離島や中山間地等の地域に係る施術料の加算である「特別地域加算(仮)」を創設することが議論されて
います。
③往療料の見直し及び訪問施術料(仮)の創設
あはきの往療料は、これまで医科の訪問診療料に近い形で運用されており、医科で言う緊急の場合の往診料とは違った
算定項目となっていました。
今回の往療料の見直しに際して、緊急の場合の「往療料」と定期的ないし計画的に行う場合の「訪問料」に整理すること
が検討されています。
またその上で、施術料と訪問料を包括した1回あたりの新たな料金体系「訪問施術料(仮)」として訪問施術制度を導入する
ことが検討されています。
④料金包括化の推進
マッサージ及び変形徒手矯正術の施術料は現在、「施術部位数に応じた報酬」となっていることから、請求できる最大の
部位数が施術されているといった傾向にあります。
また、例えば脳梗塞の患者では、患部改善のため非麻痺側等の患部以外への施術も必要となるケースがあります。
このような事情により、料金包括化に移行する提案が施術者側から挙げられ、議論されています。
⑤同一日・同一建物への施術
現在、同一日・同一建物で施術を行った場合の往療料は、初めに施術を行った1人分のみ算定でき、その患者が全ての
往療料を負担している現状にあります。
訪問施術料を導入した際には、同一日・同一建物の施術でも往療料の負担が1人の患者に寄らないものとして、往療料を
含めた、1人あたりの料金として設定することについて検討されています。
まず①の「往療料の距離加算の廃止」については、過去の経緯もありほぼ決定的であり、②の「離島や中山間地等の
地域に係る加算の創設」と合わせて議論されています。
当該加算は、医科の在宅患者訪問看護・指導料を参考に、「対象地域ではない場所に所在地(出張のみの施術者の場合は
届け出た住所地)がある施術所の施術者が、特別地域加算(仮)の対象地域に居住する患者に対して訪問による施術を行った
場合についても、加算の対象とされることが検討されています。
なお、こちらは往療料の距離加算の廃止に配慮した加算のため、該当地域に所在する施術所に患者が「通所した」場合は
加算の対象とされない方針です。
そして③の「往療料の見直し及び訪問施術料(仮)の創設」は⑤の「同一日・同一建物への施術」と合わせて議論されています。
基本的には、同意書を取得後の往療による施術は「定期的ないし計画的に行う場合」として、訪問施術料(仮)の算定対象と
する一方で、「往療料」の要件に、限定した「突発的な往療」に該当した場合のみ往療料として算定可とすることが検討
されています。
ここでの「突発的な往療による施術が必要な場合」とは、これまで通院が可能であった患者が、歩行困難な状況となった
ことで、当該患家からの訴えがあり、突発的な往療が必要となる場合、という形で整理されています。
つまりいくら突発であっても同意書ありき、という考え方になります。
さらに⑤の「同一日・同一建物への施術」については、訪問施術料(仮)の区分として、同一建物の患者(在宅の高齢夫婦:1人
の場合か、2人の場合かを想定)を基本としつつ、施設入居等の複数の患者(3人以上の場合)も想定した区分により設定する
ことが検討されています。
したがって改定後のあはきの訪問施術のパターンは
1.患者の自宅に訪問し施術する
2.同一日に同一建物の患者宅等に訪問し2人に施術する
3.同一日に同一建物の施設等に訪問し3人以上に施術する
という形に分けられます。
さらに、片道16キロを超えない範囲で離島・中山間地等へ訪問施術した場合は加算があり、元々同意書を持っている患者に
対して突発的に往療した場合には往療料を算定できる、という整理になります。
④以外の検討事項については、厚生労働省の案のまま採用される空気感になってきていますが、④の「料金包括化の推進」
は、賛成する施術者側と反対する保険者側とで意見が割れているため、来年度の料金改定で採用されるかどうかはまだ不透明です。
それぞれの細かい金額設定については、療養費全体の改定率にも影響してくるため、④の「料金包括化の推進」も含め、
全体が決定するにはまだまだ時間がかかりそうです。会員の先生方には情報が入り次第共有させていただきますので、
直前になって慌てないようご確認いただければ幸いです。
会員の皆様方には昨年度も大変お世話になりました。
本年もアトラ請求サービスをどうぞよろしくお願いいたします。