今年度より会員の先生方を対象に、業界の動向等をお届けする目的から月に一度グループミーティングを開催しています。
前回のグループミーティングでは「柔整療養費の償還払い化について」お伝えしましたが、その後ご参加いただいたある先生より「そもそも償還払い、受領委任払いって何?」といったご質問をいただきました。
本コラムでは過去にも何度かご紹介していますが、今回は「なぜ柔道整復師が保険請求を出来る様になったのか?」について歴史を紐解いてお伝えしていこうと思います。
今から84年前の昭和11年。
当時は整形外科を標榜する病院や医師が非常に不足していました。
国はこの状態を解消すべく、柔道整復師に対して現金給付で保険請求が出来るようにしたのが、柔道整復における保険請求の始まりだと言われています。
これは当時国民から、新しい分野である整形外科に行くよりも、従来通り信頼のおける柔道整復師の施術を受けたいという声があったこと、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがあるという理由により、患者保護の立場から認められたものだと思われます。
そして幾度もの見直しがあり、現在の保険請求に至っています。
柔道整復師や鍼灸師の取り扱う療養費は、病院や診療所の診療報酬で行われる現物給付とは異なり、「現金給付」が対象となっています。
原則的には、療養に要した費用を事後、患者が保険者に対して請求をし、それを受け取るという仕組みなのですが、これは非現実的ということで、院が保険者と受領委任契約を結び、現金で直接給付を受け取る仕組みとなっています。
現金給付とは本来、患者が施療行為を受けた後にその証明や支払い明細を添付して各保険者に提出し、保険者が適正だと判断した場合に還付されるものです。
ですから、おかしな請求では還付されない場合も有り得ます。
療養費として支払いを認める、認めないの判断は患者や柔道整復師にはなく、あくまでも支払者側(保険者)が判断するものなのです。
医療機関(病院等)の保険請求は、先ほども少し触れましたが、現物給付となっています。
これは、レセプトを支払基金へ提出し、そのまま支払いが行われるシステムとなっています。
一方、柔道整復業界は受領委任払い制度にのっとり、本来なら患者さんが所属している保険者に請求する(償還払い)ところを、柔道整復師が代わりに請求を行い、給付を受けます。
そのために、保険者ごとに複数請求を行う必要があるのです。
柔道整復療養に関する原則行為として、柔道整復師が施術を行う3負傷は捻挫・打撲・挫傷です。
これらは医師の同意を必要とせず、独自の判断で施療が可能なのは周知の通りですが、現在は患者の主訴・負傷原因を加味したうえでの判断が必要となっています。
私たちが請求する療養費は、柔道整復師・支払保険者両者の信頼の原則で成り立っていることを十分に認識する必要があります。
「事実行為を事実のままに!」この原則を守ればおかしな請求は起きないはずです。業界における常識である『この位だったら大丈夫』『判らないから大丈夫』『皆がやっているからいい』等と信頼の原則から外れることをやらないように、業界のわがまま(業界内部の常識)にとらわれず、「一般常識」を物事の基準として考えるべきでしょう。
また、療養費請求でよく「間違っていたから療養費支給申請書(レセプト)を返却してほしい」などというケースも見受けられます。
柔道整復師が施術の内容を証明し、患者がその内容を確認して「署名」をすることにより、初めて受領委任制度が成り立つという「基本部分」を私たちは再認識する必要があるでしょう。
イレギュラーを除いて、このような事を続けてしまうと、「患者に内緒で療養費支給申請書(レセプト)を操作しているのでは?」という疑義にも繋がり、ますますこの制度が困窮する要因にもなります。
上記のような歴史を十分に認識して、認められた権利を行使していく必要があります。
また、権利には必ず義務も伴います。基本的な法律や受領委任規定を理解して、適切な請求ができるように努めていきましょう。