施術録を整備されていますか? ~作成方法・保管期間について~

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2025-02-03

ありがたいことに新規会員の先生方も年々増加しており、施術録(カルテ)について聞かれることも多くなってきました。
数年前に何度か施術録についてコラムを書きましたが、このタイミングで今一度振り返りを行いたいと思います。

施術録は療養費請求の根拠となるものであり、必要な事項を記載したうえで施術が完結した日から5年間保存しなければなりません。この「施術が完結した日から5年間」というのが重要な部分で、わかりやすく言うと、現在みている傷病に全て転帰がついた日=施術が完結した日、だということです。

柔道整復であれば外傷の処置となりますので、数か月から長くても1年以内には転帰がつくことが多く、保管期間は概ね5年間と思っていいですが、はりきゅう、あん摩マッサージの場合は慢性疾患に対する処置となりますので、患者をみている限りはたとえ10年であっても施術録の保管義務がある場合がほとんど、ということになります。

さらに受領委任に係る施術に関する施術録にいたっては、自費等の施術録と区別して作成する必要があります。
当然のことながら、柔道整復、はりきゅう、あん摩マッサージ指圧の各施術においてはそれぞれ別の施術録を作成しておくようにしましょう。

また、保険者等から施術内容について調査照会があった場合は、直ちに答えられるよう常時整備しておく必要があります。
よく誤解されている内容として、柔道整復療養費支給申請書においては現在、1部位または2部位であれば負傷原因の具体的な記載は不要ですが、施術録には負傷部位数に関係なく負傷原因の記載が必要です。
「2部位以下だから患者から負傷原因を聞き取っていない」などということは到底認められません。
また、はりきゅう、あん摩マッサージにおいても医師から同意をいただいた慢性疾患に対する原因や、施術を行うに至った経緯などを記載しておくとよいでしょう。

加えて施術の経過所見、初検時のインフォームドコンセント(初検時相談支援)の内容の記載が必須であり、これらの記載がないものは本来の施術録とはいえません。特に経過に関しては、施術の結果症状がどのように変化しているのか、しっかりと記載する必要があります。

上記の通り、施術録は「療養費請求の根拠となるもの」であり、施術録が整備できていない状態での療養費請求は、いわば「根拠のない請求」ということになります。保険者が、根拠のない請求に対する返納を求めたとしても何ら不思議ではありませんし、抗弁も出来ないことになります。

施術録はただ記載されていればいいというものではなく、施術内容を証明する上で非常に重要なものなのです。
ご存知の通り、最近では多くの厚生局で頻繁に柔道整復師への個別指導を行なっており、その際には一定期間に来院された複数の患者の施術録の提出を求められ、提出された施術録を基に指導が行なわれます。
療養費支給申請書(レセプト)とは異なる「施術録」には下記の点に注意して作成してください。

① 傷病ごとの経過の記載について
繰り返しになりますが、施術録には負傷原因はもちろん各傷病の症状の変化について「経過」の記載が必要です。
来院ごとに記載することが望ましいですが、少なくとも症状に変化があった場合や新たな傷病が発生した場合は必ず記載するようにしてください。

特に柔道整復において再受傷等でさらに症状が悪化してしまった場合は、その旨施術録に記載の上、今後の施術方針を明記するようにします。疼痛、圧痛等の症状の大きさだけでなく、しっかりと文章で記載するように心がけましょう。

② 行った施術についての記載
一部の個別指導等で、日々行った施術が記載されていないことを理由として療養費の自主返還を求められた事例があるようです。料金欄には金額が載ってくることになりますので、経過欄には上記①と合わせて、その日行った施術内容を簡単に記載するようにしましょう。

例えば柔道整復なら「後療として患部の筋肉に対して手技療法、罨法としてホットパック、電療として低周波を行う」、
はりきゅうなら「疼痛緩和処置として腰部から大腿部にかけて散鍼、殿部に電気温灸器を使用」といった感じです。
同じ文面が連続して続く「コピペ」や「〃」といった記載にならないよう、きちんと記載するようにしましょう。

③ 柔道整復療養費の初検時相談支援内容の記載について
初検時にカウンセリング内容を施術録に記載した場合にのみ算定が認められる初検時相談支援料ですが、記載内容にも注意が必要です。負傷原因と同じような「日常動作中」などの抽象的な表現では義務を果たしていないと判断される可能性があります。

(1)日常生活動作上での励行事項や禁止事項(入浴・歩行・就労制限、運動制限等)
(2) 患部の状態や選択される施術方法などの詳細な説明(施術計画等)
(3) 受領委任の取扱いについての説明(対象となる負傷、負傷名と施術部位、領収証の交付義務、申請書への署名の趣旨等)
(4) その他、柔道整復師が必要と認め、懇切丁寧に行う相談支援とする

なお(1)及び(2)については、施術録に簡潔に記載するとともに、(3)については説明した旨を記載することとなっています。
ちなみに、患者が幼児などで本人ではなくその保護者に上記に関する説明をした場合もこれに含まれます。もちろん万が一、施術録への記載なしに算定を行なっていた場合は不正受給となりますので、必ず記載するようにしましょう。

④ 施術録の記載者について
施術管理者以外の資格者が施術した場合でも、保険適用施術を行おうとする場合は勤務施術者として届け出てあるはずです。保険適用施術を行う施術所であれば、施術を担当した施術者が前述した留意事項に基づいた施術録を作成しなければなりません。なお、ここでいう「施術を担当した施術者」というのは施術管理者を指すのではなく、施術を行った施術者を指します。

複数の施術者が施術に当たっている施術所では、例えば初検で訪れた患者Aさんの施術録はまず、初検時にみた施術者が施術録を作成します。その後、Aさんが受療の都度、施術者が替わるようであれば、その都度施術を担当したものがAさんの施術録の経過欄を埋めていくことになります。

従って、施術録の作成義務が課されているのは施術管理者だけではありません。
施術管理者は、当該施術所において施術録が適正に作成されているか注意を払い、もし勤務施術者(施術を担当した資格者)が施術録の作成や経過欄への記入を怠っているようであれば、それを行うように指導する責任があるといえます。

⑤ 記載の方法について
通院日、施術の内容と金額をその都度記載する必要があります。したがって、施術録は原則手書きとなります。
記載は黒、もしくは青色インクまたはボールペンを使用し、記入するべき欄はもれなく記入します。もちろん修正液などでの修正は厳禁です。たとえ電子的に残す場合であっても、都度入力が必要なことは言うまでもありません。

施術録を整備することは大変なことのように思われますが、きちんと施術内容、施術計画、患者への指導内容が記載されていれば、それは施術根拠を示す唯一最大の証拠となります。

以上を踏まえ、今一度自院での施術録管理について見直しをお願いします。